アーノルド・キアリI型症候群および脊髄空洞症の小児患者に対する終糸システム®適用から9年後の良好な術後経過

症例番号:18155

診断名:アーノルド・キアリI型症候群(小脳扁桃下垂)、脊髄空洞症、歯突起後屈、複数の椎間板症、神経頭蓋脊柱症候群、終糸病

終糸切断手術施行日:2017年2月21日

手術時年齢:11歳
術後経過観察日:2026年7月24日
経過観察時年齢:21歳

9年間の経過観察における臨床経過

症例番号18155の患者さん(本人の希望により氏名は非公開)は、11歳の時にロヨ医師率いるチームによって、終糸システム®を用いた終糸切断手術を受けました。手術から9年後、術後の経過を評価するため、当研究所で経過観察を受けました。

治療前には、さまざまな程度の頭痛があり、身体的な負荷やバルサルバ法(いきみ動作)によって誘発されていました。頭痛は頻繁に生じ、主に後頭部および前頭部に認められ、吐き気、光過敏、音過敏、前向性記憶障害を伴っていました。

また、身体的な負荷の後に肩の痛みが生じるほか、ときどき上肢全体の力が抜けるような感覚や、歩行時に生じる左鼠径部の痛みも訴えていました。さらに、下肢の突然の脱力発作や、手足の熱感、腫れたような感覚、かゆみを伴う症状もあり、これらは手術前の数か月間にみられていました。

術後数年間に行われた複数回の経過観察では、症状にいくらかの変動が認められたものの、臨床経過は良好でした。現在では、症状が大幅に軽減し、その中には何年も前から消失している症状もあるとのことです。

神経学的所見の改善

術後の経過観察時に実施された神経学的検査では、それまで認められていた客観的な神経学的所見の大部分について、完全または部分的な改善が確認されました。

具体的には、眼振、下肢に対するミンガツィーニ徴候およびバレー徴候、腱反射、足底反射、腹壁反射などの改善が認められました。

手術前後のMRI画像

2016年に撮影された術前のMRI画像では、患者さんの臨床像に関連するとされる複数の所見が認められました(図1、図2)。

主な所見は以下のとおりです。

  • 頸椎の生理的前弯および胸椎の生理的後弯の消失
  • 小脳扁桃下垂:環椎後弓下縁の中央付近から軸椎後弓上縁まで
  • 歯突起後屈
  • 椎間板症:C3-C4、C4-C5、C5-C6、C6-C7、T8-T9
  • 第2頸髄における脊髄空洞症、ならびに頸髄および胸髄における虚血・浮腫(第10胸髄まで確認)

Descenso de las amígdalas cerebelosas y su posterior ascenso

図1 症例番号18155の頭蓋頸椎MRI画像:2016年の術前画像(左)と2026年の術後画像(右)。小脳扁桃の下垂と術後の上昇が示されています。

Cavidad siringomiélica en C2 y su desaparición en el control postoperatorio

図2 症例番号18155の頭蓋頸椎および胸椎MRI画像:2016年の術前画像(左)と2026年の術後画像(右)。第2頸髄に認められた脊髄空洞症と、術後の経過観察時におけるその消失が示されています。

終糸切断手術から9年後の画像所見

終糸システム®を用いた終糸切断手術から9年後の2026年に実施されたMRI画像では、術前画像と比較して変化が認められました。

主な所見は以下のとおりです。

  • 脊髄空洞症の消失
  • 小脳扁桃の上昇
  • その他の所見については、術前画像と比較して大きな変化は認められない

術前・術後のMRI画像を比較することで、9年間の経過観察期間における小脳扁桃および脊髄空洞の変化を確認することができました。

治療結果に対する患者本人の評価

治療結果についての主観的な評価として、患者さんは症状の80%が改善したと述べており、この手術は非常に有用であったと回答しています。

また、当時はご両親が決定した治療でしたが、患者さんご本人は、もし再び選択する機会があれば同じ手術を選ぶと述べ、終糸システム®を用いた終糸切断手術を推奨しています。

長期的に見られる良好な術後経過

本症例では、小児期にアーノルド・キアリI型症候群および特発性脊髄空洞症と診断され、終糸システム®を用いた終糸切断手術を受けた患者さんについて、9年間にわたり臨床的および画像上の改善が維持された経過が示されています。

患者さんが21歳の時に行われた経過観察では、症状の大幅な軽減、複数の客観的な神経学的所見の完全または部分的な回復、およびMRI画像上の変化が認められました。特に、小脳扁桃の上昇と、術前に認められていた脊髄空洞の消失が確認されました。

本症例は、小児期に治療を受けたアーノルド・キアリI型症候群および特発性脊髄空洞症の患者さんにおいて、終糸システム®を用いた終糸切断手術後の長期的な経過を観察した一例です。患者さんご本人による治療結果の主観的評価も良好で、QOL(生活の質)の改善が報告された症例です。

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