慢性疼痛が終糸病(アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症)に及ぼす影響
2026年10月17日は「世界疼痛デー」です。2004年に国際疼痛学会(IASP)と世界保健機関(WHO)が関与する取り組みとして始まったこの活動は、痛みが人々の生活に及ぼす影響について、社会的な認識を高めることを目的としています。
痛みとは?
痛みとは、実際の組織損傷、または組織損傷の可能性に関連する、不快な感覚的・情動的体験です。痛みは身体の異常を知らせる重要な役割を果たしますが、その感じ方や強さは、身体的な状態だけでなく、心理的・社会的な要因によっても影響を受けます。
痛みの種類
痛みは、次のように分類できます。
- 急性疼痛:侵害受容器が有害な刺激を検知した際に、神経系が迅速に反応して生じる痛みです。
- 慢性疼痛:中枢神経系において痛みの信号が過剰に増幅され、当初の刺激と痛みの反応との間に直接的な関係がなくなる場合に生じる痛みです。
神経頭蓋脊柱症候群および終糸病に関連する痛み
当研究所が対象とする後天性の神経頭蓋脊柱症候群や先天性の終糸病に関連する病態では、日常生活に大きな支障をきたすほどの強い痛みがみられることがあります。
関連する疾患には、従来の医学では原因が不明とされるものが多く、以下が含まれます。
- アーノルド・キアリI型症候群
- 特発性脊柱側弯症および特発性脊髄空洞症
- 線維筋痛症
- 複数の椎間板症
- 尾骨脱臼
これらの病態では、頭痛、頸部痛、背部痛、腰痛、四肢の痛みなどが生じ、日常生活動作や身体活動が制限されることがあります。
治療と生活の質の向上
慢性疼痛は、患者さんの身体的・精神的な負担を増大させ、自立した生活や日常活動、生活の質に影響を及ぼすことがあります。当研究所では、独自の治療法である「終糸システム」による治療後の経過を観察し、臨床症状や痛みの変化について報告しています。当研究所の報告によれば、治療後、多くの患者さんにおいて臨床症状の改善が認められ、痛みを伴う症状についても改善が報告されています。
臨床成績:疼痛軽減における有効性
ミゲル・B・ロヨ=サルバドール医師が率いる当研究所の医療チームは、終糸システムによる治療に関する臨床データを蓄積しています。
当研究所が報告した、終糸病、特発性脊髄空洞症、アーノルド・キアリI型症候群と診断された患者94人を対象とする分析(図1)では、終糸切断術から1年後の診察時に、以下のような疼痛症状の改善が報告されています。
- 頭痛:86%の症例で改善
- 頸部痛:76%の症例で改善
- 腰仙部痛(腰の下部の痛み):68%の症例で改善
- 背部痛(背中の中央部の痛み): 79%の症例で改善

図1:終糸病および特発性脊髄空洞症の患者94人を対象とした、終糸切断術後1年の診察時における症状の変化を示したグラフ。
中枢神経系における最新の研究
現在、科学文献や国際的な医学研究では、慢性疼痛に伴う生理学的変化や、痛みの情報が神経系でどのように処理されるかについて研究が進められています。
慢性疼痛では、末梢神経や中枢神経系における痛みの処理が変化し、痛みに対する感受性が高まることがあります。このような変化には、侵害受容性の情報の伝達や、中枢神経系における痛みの調節機構など、複数のメカニズムが関与しています。
また、当研究所の研究開発・イノベーション部門では、終糸病および神経頭蓋脊柱症候群を研究対象としています。患者さんの生活の質の向上を目指し、これらの病態に関連するとされる慢性疼痛や神経障害性疼痛の軽減に向けた治療戦略の開発と研究に取り組んでいます。
終糸システムによる治療後のケア:疼痛の軽減から理学療法・リハビリテーションへ
外科的治療や薬物療法は、患者さんの状態に応じて組み合わせることで、痛みや、それに伴う身体機能の制限を軽減できる場合があります。治療後は、患者さんの回復状況に応じて、専門家の指導のもとで理学療法やリハビリテーション、適切な身体活動への復帰を進めることが重要です。
当研究所では、終糸システムによる治療後のプログラムを、持続的な脊髄牽引によって生じるとされる機能障害への対応と、身体機能の回復を支援することを目的として実施しています。
当研究所の見解では、終糸による異常な緊張状態を解放することを目的とした治療によって、先天性または後天性の要因に対処し、小脳扁桃の下垂、脊髄空洞症、脊柱側弯症などに関連する病態や疼痛の改善を目指しています。