最終更新日: 29/01/2019, ミゲル・ロヨ医師, 登録番号: 10389. 脳神経外科医、神経内科医
アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)は、小脳の下の部分の小脳扁桃が大後頭孔から脊柱管へ下垂する病気で、脊髄内に奇形などは見つかりません。ある文献によれば下垂が3mm以上や5mm以上でなければ小脳扁桃下垂と認めないもの、または下垂が0mmでも小脳扁桃下垂と診断するものや、小脳扁桃への影響がみられ、なおかつ症状が出ている場合に診断される場合もあります。
アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)において症状は様々ですが、特に頻繁に確認される症状を多い順に列挙すると、頭痛、頸痛、手足の麻痺、視覚障害、手足の疼痛、感覚異常、めまい、 嚥下障害、腰痛、記憶障害、歩行障害、胸痛、平衡感覚障害、痛覚異常、言語障害、括約筋障害、不眠症、嘔吐、失神、震えです。
アーノルド・キアリ症候群には従来からの4つの分類に加え、近年新しい分類2つが加えられました。
1型:他の神経系奇形が見られない小脳扁桃下垂
2型:脊髄を脊柱管に固定させる神経系奇形が見られる小脳扁桃下垂
3型:小脳の脱出といった脳の異常が見られる小脳扁桃下垂
4型:小脳テント形成不全などの小脳形成不全が見られる小脳扁桃下垂 近年加えられた分類:
0型:小脳扁桃下垂は見られないが、アーノルド・キアリI型症候群特有の症状が見られるもの
1,5型:脳幹の大後頭孔内への脱出を伴う小脳扁桃下垂
アーノルド・キアリ症候群の原因は、ある奇形が脊髄を引っ張ることで脊髄に牽引がかかり、アーノルド・キアリ症候群が起こりますが、アーノルド・キアリ症候群のI型で見られる形態学的変化は、小脳扁桃下垂のみで奇形は見られません。アーノルド・キアリI型症候群の見解は以下の通りです。
– 当研究所の治療計画「終糸システム®」による見解
当研究所のロヨ脳神経外科医の見解によると、緊張性終糸(MRIなどの画像では明らかにならない)によって引き起こされる脊髄の引っ張り=牽引が、アーノルド・キアリ奇形I型を引き起こしています。
– 従来の見解
図2:生後8ヶ月時と生後20ヶ月時の患者のMRI画像。小脳扁桃下垂が確認できます(遺伝的要素に加えて、後天的要素も見られます)。出典:Huang P.”Acquired”Chiari I malformation. J.Neurosurg. (1994).
アーノルド・キアリI型症候群のリスク要因は、以下の通りです。
アーノルド・キアリI型症候群の合併症は、牽引の度合いやそれに伴う圧迫の程度によって異なります。後者の圧迫の程度は、脊髄と脳幹の牽引と大後頭孔におけるスペースの状態によって決定されます。
アーノルド・キアリI型症候群の治療法として従来行われるのは、大後頭孔減圧術といわれる外科治療です。外科治療が適用になるのは症状が見られる患者さんで、病気の悪化によって命にかかわる場合などに適用されます。
一方、当研究所のロヨ医師が発表した博士論文によって、アーノルド・キアリI型症候群などの原因が、脊髄の末端にある終糸が全神経系を下に引っ張っているためだと明らかになったことで、1993年から外科治療によって終糸を切断しキアリ奇形の原因を取り除く、終糸切断手術という新しい治療法が生み出されました。当研究所で行われている終糸切断手術は、身体に負担の少ない手術であり、病気の症状の有無に関わらず手術が行われ、病気の進行を阻止できます。
大後頭孔減圧術の合併症や死亡率は、アーノルド・キアリI型症候群自体が引き起こす合併症や死亡率よりも高くなるという結果が出ています。よって、当研究所では大後頭孔減圧術の実施に反対しています。
バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所の独自の治療計画、終糸システム®を適用して終糸切断手術を行い、現在までに1500名以上のアーノルド・キアリI型症候群(脊髄空洞症または脊柱側弯症も含む)患者さんが治療を受けられました。終糸切断手術の目的は、病気の進行を止め、これ以上小脳扁桃の下垂や病気による損傷を悪化させないようにすることですが、術後に症状が改善された例や、病気によって下垂していた小脳扁桃が上昇するという症例も確認できています。
症例
記述: 1883年にスコットランドのパースシャー出身の解剖学者・外科医のJohn Cleland (1835-1925)が、水頭症、脳瘤、二分脊椎、脊髄裂を患う児童患者から小脳虫部と小脳扁桃、第4脳室の伸長を確認しました。その後、1891年と1896年にハンス・キアリ(Hans Chiari)が新しい症例とその分類を発表、1894年にJulius Arnoldが普及に貢献しました。
命名: SchwalbeとGredigが1907年に“アーノルド・キアリ奇形”と命名しましたが、1992年に世界保健機関(WHO)が定めた疾病及び関連保健問題の国際統計分類第10版によれば、現在の正式名称は、“アーノルド・キアリI症候群”または“アーノルド・キアリI型病”とされています(Q07.0, CIE-10)。
罹患率:1000人に1人の割合で発症するという著者もいれば、人口の1%以下だと言及する著者もいます。どちらにしても、小脳扁桃の下垂が3mmまたは5mm以上に設定された場合の数値です。
ロヨ医師の研究を基に発表された博士論文(1992)の結果、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症、扁平頭蓋底、頭蓋底陥入症、歯突起後屈、脳幹のよじれなどの原因不明と考えられていたものが、終糸病という脊髄と全神経に対する牽引から起こっていることが明らかになりました。
終糸病において、全神経系にかかる牽引はすべてのヒト胚で起こっており、程度の差はあっても影響を与えており、その程度や形は様々です。椎間板ヘルニア、脳小血管病、椎間関節症、バーストラップ病、線維筋痛症、慢性疲労、夜尿症、尿失禁、下半身の筋力低下などの原因も終糸病に付随しています。終糸病の正確な診断、治療、術後の経過観察などを明確にするため、独自の治療計画「終糸システム®」を立案しました。
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