1.1 診断について
1.1.1 アーノルド・キアリI型症候群/特発性脊髄空洞症/特発性脊柱側弯症の診断をどのように確定しますか。
診断名を確定するには、下記の検査画像とその画像診断報告書が必要です。
頭蓋-頸部MRI画像
胸部MRI画像
腰仙部MRI画像
全脊柱X線画像(正面と側面)
上記の検査を造影剤使用で行った後、インターネット上で画像(zip形式に圧縮)と画像診断報告書をお送りください。その際に下記のサイトをご利用ください。WeTransfer: www.wetransfer.comご希望であれば、病院から受け取ったMRIのCDのコピーを郵送していただくことも可能です。オンライン診断で当研究所の医療チームによって病気が確認された場合、診断名を確定するために当研究所での診察を提案しております。
1.1.2 アーノルド・キアリ奇形I型を患っているのに、どうして頸部以外に胸部と腰部のMRI検査と全脊柱X線検査が必要なのですか。
アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形)は、多くの症例で他の脊髄の病気との関連性が認められています。よって、他の病気の有無を調べるため、頸部以外のMRI画像(胸部と腰部)と全脊柱X線画像の撮影をお願いしております。
1.1.3 “何特発性”とはですか。
特別な原因が見当たらないのに、症状が出ている疾患を特発性疾患と呼んでいます。現在まで脊髄外傷や脊髄腫瘍に伴う脊髄空洞症以外を、原因不明=特発性脊髄空洞症と呼んでおり、これは脊柱側弯症にも同じことが言え、外傷性側弯症、神経線維腫症による側弯症、神経・筋性側弯症、先天性側弯症、変性側弯症以外を、特発性側弯症と呼んでいます。
この原因不明といわれてきた特発性脊髄空洞症と特発性脊柱側弯症の原因を、「終糸の異常牽引」と突き止めたのが、当研究所のロヨ-サルバドール氏です。終糸の切断手術を行うことで、特発性脊髄空洞症と特発性脊柱側弯症の根本的な原因を取り除くことができます。
1.1.4 私は水頭症とアーノルド・キアリI型症候群を患っているのですが、飛行機に乗ることはできますか。また水頭症の治療は受けられるのでしょうか。
飛行機に搭乗できるかどうかは、患者さんの病状によって異なります。当研究所は脳神経外科治療を専門としておりますので、水頭症の治療も行っておりますが、水頭症の治療は他の脳神経外科で行われているものと違いはございません。また、水頭症の治療後は術後検診で通院することになりますので、バルセロナにお住まいでない患者さんに関しては、母国での治療をお勧めしております。
1.1.5 “ 神経頭蓋脊柱症候群”と“終糸病”は何ですか。
“神経頭蓋脊柱症候群”と”終糸病”は、緊張性終糸が原因で起こる異常な脊髄牽引が引き起こす病状を定義するために、当研究所が用いている診断名です。緊張性終糸が原因で起こっている疾患に、アーノルド・キアリ奇形I型(アーノルド・キアリI 型症候群)、特発性脊髄空洞症、特発性脊柱側弯症などがあります。
1.1.6 脊柱側弯症の弯曲が40〜50度あります。終糸切断手術で進行は止まりますか。
特発性脊柱側弯症が40度を超える場合、弯曲は緊張性終糸だけによって起こるのではなく、重力の影響も受けています。終糸切断手術によって進行を止められるケースもありますが、終糸切断手術後も側弯が悪化することがあります(終糸切断手術、弯曲の進行速度は緩やかになります)。よって、終糸切断手術後、当研究所から患者さんに合った理学療法、リハビリテーションおよびコルセット等の提案をしております。
1.1.7 脊柱側弯症の側弯が50度以上あるので、整形外科医や外傷医には脊椎固定術を勧められました。それなのにどうして終糸切断手術を受けなければなりませんか。また、受けるとしたらいつ頃がいいですか。
当研究所では特発性脊柱側弯症の研究および治療を、脳神経外科の視点から行っております。特発性脊柱側弯症において、脊椎内の脊髄はぴんと張った緊張状態にあります。その緊張状態を終糸切断手術によって取り除き、弯曲を助長している牽引を軽減することができます。
終糸切断手術は特発性脊柱側弯症のどの患者さんにも有効ですが、終糸切断手術を受ける前に固定術を行うことで脊髄牽引を助長してしまう恐れがあるため、対麻痺を回避するためにも固定術前に終糸切断手術の実施を提案しております(固定術後でも終糸切断手術によって脊髄牽引を取り除くことができるので、終糸切断手術は脊椎矯正に有効な治療法です)。
1.1.8 脊柱側弯症を患っているのに、どうしてMRI検査を受けなければなりませんか。
当研究所は脳神経外科を専門とする医療機関です。脊柱側弯症の研究と治療を、脊椎ではなく脊椎内にある脊髄という脳神経外科の視点から行っております。全脊柱X線検査だけでは、脊椎の骨の状態しか調べることができませんが、MRI検査では脊椎内の脊髄の状態を詳しく見ることができます。よって、患者さん全員にMRI検査の撮影をお願いしております。
1.2 外科治療の提案
1.2.1 担当医に手術を提案されたのですが、どうしたらいいですか。
手術の提案は、病名、治療法、患者さんの年齢、生活の質、手術で得られるメリットなどを考慮して、患者さんの病状を詳細に確認したうえで行われます。
1.2.2 終糸病の治療で、いつ終糸システム®適用での終糸切断手術を受ければいいですか。
終糸病と確定された場合、身体的悪化、特に進行性の神経学的悪化を意味しますので、病気の原因を取り除いて進行を防ぐためにも、早期に終糸切断手術を受けることを提案します。
1.2.3 MRI画像などで病気が見つかっても、症状が全くない患者さんはいますか。
いらっしゃいません。当研究所での3000以上の初診で、身体検査や神経学的検査で必ず症状や徴候を確認することができています(患者さんの中には、診察を通して初めて症状があることに気づく方もいらっしゃいます)。当研究所の臨床経験から、終糸病患者には複数のタイプがあることがわかりました。
- 検査画像上でほとんど異常は確認できないものの、症状や徴候が多く見られる患者さん
MRI検査やレントゲン検査を行っていない患者さんの多くは、例えば軽度の小脳扁桃下垂や脊髄内の虚血/浮腫といった初期の脊髄空洞症、10度以下の脊柱側弯症などの病名は診断されません。その結果、治療が早期に行われにくくなり、病気の悪化へとつながります。
- 症状や徴候はほとんど確認できないものの、検査画像上ではっきりと異常が確認できる患者さん
MRI画像で偶然病気が発覚したものの、自覚症状がないために手術実施時期が遅くなる傾向があります(病気がどのように今後の身体に影響を及ぼすかわからないため)。終糸システム®適用での終糸切断手術はこういった症例でも行われます。それは、特に手足や頭部の脱力感や感覚消失といった症状の悪化はよく起こり、自覚症状としてはないものの、すでに損傷が始まっており、状態によっては手術によって回復しない場合もあるため、早期の治療を提案しております。また、キアリ奇形や脊髄空洞症は、大後頭孔付近の脳幹の圧迫を引き起こし、生活の質に影響を与える可能性があります。
- 症状や兆候は確認できるものの、検査画像上では全く異常が確認できない患者さん
例えば小脳扁桃の圧迫、アーノルド・キアリ0型症候群、臨床型の神経頭蓋脊柱症候群などの症状は見られるものの、実際の症状の原因がわからなかった患者さんの中で、終糸病と診断された例もあります。当研究所の脳神経外科医による脳部、脳幹部、脊髄部の綿密な検査によって他の疾患が排除されることにより、終糸システム®が適用され、優れた成果を得られています。
- • 検査画像上では病気の深刻さが確認できるものの、自覚症状は全くない患者さん
多くの場合、アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形)や脊髄空洞症が見つかっても症状が出るまでは手術をせず、経過観察を勧める脳神経外科医がほとんどですが、それは、治療で行われる大後頭孔減圧術自体が大変体に負担のかかる治療法であるため、症状のない患者さんに行うにはリスクが高すぎると判断されるからです。終糸システム®適用での終糸切断手術は、症状が見られない患者さん(実際は反射や機能不全などの徴候が認められます)にも提案される治療法です。病気はすでに存在しているので、これ以上病気による損傷を起こさないためにも、早期治療を提案しています。
1.2.4 外科治療は待った方がいいという脳神経外科医もいるのですが、それはどうしてですか。
キアリ奇形や脊髄空洞症の外科治療で行われる治療が大後頭孔減圧術やシャント術の場合、患者さんによっては経過観察を指示されることがあります。それは大後頭孔減圧術やシャント術自体が大きなリスクと合併症を伴う手術で、病気を患っているリスクよりも高くなるからです。よって症状がそれほど重くなく、患者さんの生活の質に影響がないと判断された場合は、手術ではなく経過観察を勧められます。
1.2.5 終糸システム®適用での終糸切断手術を待った方がいい症例はありますか。
終糸病患者のための治療計画である終糸システム®適用での終糸切断手術のリスクは、傷口の感染または血腫のみです。よって、終糸病と診断された時点で、病気の悪化を防ぐために早期治療を提案しております。
1.2.6 終糸システム®適用での終糸切断手術と大後頭孔減圧術やシャント術の治療の違いは何ですか。
終糸システム®適用での終糸切断手術は、病気の原因を取り除き、病状の悪化を阻止します。手術の目的が「病気の原因を取り除く」ことであっても、多くの症例で下垂した小脳扁桃の上昇、脊髄内の空洞の減少、弯曲の改善などが確認できています。早期に治療を行うことで症状の悪化を防ぐだけではなく、再生可能な細胞が術後に回復する可能性もあります。
一方の大後頭孔減圧術とシャント術は、病気の原因である異常な緊張状態にある終糸によってもたらされる脊髄牽引は取り除くことができません(参考文献:「アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症などの病因論」, 1996, Royo Salvador)。
よって、多くの症例で術後症状が再発し、数年後に大後頭孔減圧術の再手術を受けられる患者さんがいらっしゃいます(参考文献:Rick Labuda 氏の“Hindbrain decompression for Chiari-syringomyelia complex”, di Hayhurst C. et al.に関する執筆記事)。
1.2.7 私は脊髄空洞症あり/なしのアーノルド・キアリ奇形I型(アーノルド・キアリI型症候群)を患っていて、バルセロナキアリ研究所に終糸切断手術を勧められましたが、他の脳神経外科の先生からは大後頭孔減圧術を勧められました。終糸切断手術後に、大後頭孔減圧術を受けなければならない例はありましたか。
終糸システム(Filum System®)を適用して終糸切断手術を受けた1000名以上の患者さんで、終糸切断手術後に大後頭孔減圧術を受ける必要のあった患者さんは一人もいらっしゃいませんが、再生不可能な神経組織と回復段階の症状を大後頭孔減圧術で改善できると信じ、終糸切断手術後に減圧術を受けた患者さんがいらっしゃるのは事実です。しかしながら、減圧術を受けても改善は見られず、それどころか悪化したケースも見られます。
当研究所で終糸切断手術を受けられた患者さんの中には、過去に大後頭孔減圧術を1回または複数回受けられた患者さんがいらっしゃいます。
1.2.8 術後の症状の変化は何に左右されますか。
術後の症状の変化は、終糸システム®(外科治療、リハビリおよび術後検診までの治療計画)の早期適用によって変わってきます。多くの患者さんに何らかの改善は見られますが、終糸切断手術適用時の病気による損傷が再生可能かどうかによって術後の症状は変わってきます。よって、終糸の異常な緊張状態によって生じる再生不可能な損傷がこれ以上起こらないよう、早期の治療を提案しております。
1.3 治療
1.3.1 バルセロナキアリ研究所の終糸切断手術はどのように行われますか。
終糸システム(Filum System®)に従って行われる低侵襲治療の終糸切断手術は、仙骨部で行われます。骨に触わることも、髄膜も開くこともありません。手術創は数センチほどで、縫合糸は皮膚表面に出ません。成人の場合、禁忌がなければ鎮静剤を併用した局所麻酔で手術が行われます。
1.3.2 手術創はどこにできますか。目立ちますか。
手術創は仙部(尾てい骨の部分/背骨の一番下辺り/お尻の始まりの部分)にあります。傷口は時間が経てば、ほとんど見えなくなります。
1.3.3 終糸切断手術にはどのようなリスクや合併症がありますか。
当研究所の行う終糸切断手術の唯一のリスクや合併症は、手術した部位の血腫や化膿です。これは手術後の指示、1.術後に傷口付近に負担のかかる体勢や動きをしない、2.術後10日間は水との接触を防ぐ、という指示に従わなかったことで起こります。また、他の手術と同様、終糸切断手術は手術自体のリスクの他に麻酔などの外因性リスクを伴います。
1.3.4 終糸切断後、脊髄が脊椎内で動いてしまうことはありませんか。
終糸切断手術によって、脊髄と神経系に影響を与えていた異常終糸の牽引状態を取り除くことができます。神経系は解放されますが、組織自体の位置は変わりません。ごくわずかの症例で、脊髄円錐(脊髄下端部)や小脳扁桃が数ミリほど時間をかけて(通常手術から数年後)、上昇することが確認されています。
1.3.5 終糸は何か機能があると思うのですが、切ってしまって大丈夫なのでしょうか。
終糸はヒト胚の段階で機能を持っている繊維であり、生まれてからは終糸の機能はありません。よって幼年期、青年期、成人のどの段階で終糸を切っても、体に影響は与えません。
1.3.6 バルセロナキアリ研究所の終糸システム®適用での終糸切断手術の効果は、患者の年齢によって変わりますか。
変わりません。当研究所の終糸切断手術を受けた800名の患者さんで、かなりの脊髄牽引が確認された児童患者の例や、ほとんど症状のない成人患者の例など、様々です。手術の効果に差が出るのは、病気による神経系の損傷の度合いであり、患者さんの年齢ではありません。よって、終糸病(アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症含む)と診断されたら、これ以上の神経系の損傷を避けるために早期の終糸切断手術実施をご検討ください。
1.3.7 何歳から終糸切断手術が受けられますか。小さい子供でも終糸切断手術を受けられますか。
はい、小さいお子さんでも安心して終糸切断手術を受けることができます。脊髄牽引が見つかり次第、病気の進行を防ぐため早期の終糸切断手術実施を提案しております。
当研究所の終糸切断手術を受けた800名の患者さんのうち、5,71%が11歳以下の患者さんで、現在、終糸切断手術を受けた最も若い患者さんは生後11ヶ月です。児童患者の手術は、通常全身麻酔下で行われます。
1.3.8 終糸切断手術は10代の患者でも受けられますか。
当研究所の終糸切断手術を受けた800名の患者さんのうち、6,86%が12歳〜15歳の患者さんで、通常手術は全身麻酔で行われます。16歳以上の患者さんは成人扱いとなり、通常鎮静剤を併用した局所麻酔で手術をしますが、最終的な判断は麻酔科医が行います。
1.3.9 年配の終糸切断手術例はありますか。何歳まで受けられますか。
当研究所の低侵襲治療の終糸切断手術を受けた800名の患者さんのうち、全体の5%が66歳以上の患者さんです。当研究所では、手術によって患者さんの生活の質を改善できると判断した場合、年配の方でも終糸切断手術を提案しております。現在までの終糸切断手術を受けられた患者さんの最高年齢は、86歳です。
1.3.10 手術日に月経が重なると、手術に支障が出ますか。
1.3.11 終糸切断手術後に、終糸が再度くっついてしまうことはありますか。
終糸切断手術後、切断した終糸末端部の“再固定”、または周辺に癒着する可能性が報告されています。Stone&Rozzelle(2010)やCochrane et al.(1998)によると、従来の硬膜”内”終糸切断手術における癒着の可能性は1%〜55%とされています。一方、当研究所で施行されている尾骨部からの硬膜”外”終糸切断手術の癒着発生率に関する文献は、現在まで発表されておりません。当研究所で行われた1000例以上の終糸切断手術実績で、癒着が確認されたのは1例のみで、病気の兆候と症状の再発が確認されたため患者さんは再手術を受けています。
1.3.12 どうして私の国では終糸切断手術が行われていないのですか。終糸切断手術を実施している病院を見つけましたが、キアリ奇形や脊髄空洞症、脊柱側弯症には効果がないと言われました。
当研究所は、ロヨ・サルバドール医師のアーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)、脊髄空洞症、脊柱側弯症の新しい病気の見解に従って、終糸切断手術を行っております。その見解とは、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症の原因は、異常な緊張状態にある「終糸(しゅうし)」という繊維にあり、終糸が脊髄を下に引っ張っていることでアーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症が起こっている、という見解です。よって、終糸切断手術を行うことによって病気の原因=脊髄牽引を取り除くことができます。しかし、現在でも当研究所とは異なる見解が一般化され、体に負担のかかる外科手術が行われているのが現状です。
終糸切断手術は、(腰椎椎弓を切除して行われるものの)古くから存在しており、本来、脊髄係留症候群の診断で行われるものであり、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症の治療では行われていませんでした。よって、現在でもロヨ医師の見解を知らない多くの医師は、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症の治療に終糸切断手術を適用することはなく、そのため上記の病気の治療としての終糸切断手術の効果を知りません。
1.3.13 母国で診てもらった先生に、ロヨ先生と同じ手術を行っていると言われました。信じてもいいのでしょうか。
終糸システム(Filum System®)に従って行われる終糸切断手術は、現在のところ当研究所でのみ行われております。同じ治療計画で終糸切断手術を行っている医師や機関はございませんので、ご注意ください。
キアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所に属するバルセロナ終糸アカデミー(Filum Academy Barcelona®)では、脳神経外科医、医療チーム、脳神経外科研究所を対象に、終糸システム®メディカル(Filum System® Medical)と終糸システム®サージェリー(Filum System® Surgery)の教授を行っています。なお、異常な緊張性終糸によって引き起こされる病気の診断、処置、術後検診が行えることを証明する終糸システム®メディカル(Filum System® Medical)を修了した医師と機関の詳しい情報は、当研究所のホームページの“医療提携”に掲載しておりますので、ご覧ください。
認可機関
認可機関
1.3.14 終糸システムの横に登録商標マーク(®)が付いているのはなぜですか。
当研究所での臨床経験を通して、終糸システム®という終糸病の診断方法、治療法、リハビリテーションを含めた治療計画がまとめられました。当研究所が行っている治療の品質を保証するため、2013年に終糸システム®が商標登録されました。また、当研究所は品質マネージメントシステムに対する国際規格認証(UNE-EN ISO 9001:2015)を取得している脳神経外科に特化した医療機関です。終糸システム®適用での終糸切断手術を行っているのは、当研究所のみです。
1.4 治療の効果
1.4.1 終糸切断手術後、アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)で下垂した小脳扁桃は元の位置に戻りますか。
一般的に終糸切断手術後、小脳扁桃や脳幹の下垂に変化は見られません。術後すぐに期待できるのは、大後頭孔付近の神経組織への圧迫解消と、(中枢神経への影響がなくなるため)心肺機能不全の回避です。それでも、当研究所で手術を受けられた患者さんの例で、手術から2、3年経って小脳扁桃が数ミリ上がった例や、元の位置に戻ったケースもあります。
1.4.2 終糸切断手術後に、症状はなくなりますか。
終糸切断手術は脊髄牽引症候群の進行を阻止するための手術です。病気によってもたらされた神経系の損傷は再生不可能なものと、死には至らないものの機能していない再生可能なものがあり、再生可能な細胞によって引き起こされていた症状は、術後改善されることがありますが、細胞死によって引き起こされた神経学的症状は、改善されません。脊髄損傷を最小限に抑えるためにも、脊髄牽引が確認された時点で、早期の終糸切断手術の実施を提案しております。
1.4.3 すでに大後頭孔減圧術を受けましたが、終糸切断手術の効果に影響は出ますか。
アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)で、1回または数回大後頭孔減圧術を受けている患者さんの場合、大後頭孔減圧術後の終糸切断手術の効果は、終糸システム(Filum System®)に従って終糸切断手術だけを受けられた患者さんと比べると、(他の関連疾患、損傷細胞が再生可能か不可能であるかを考慮しても)部分的なものになります。
当研究所では、ロヨ医師の40年以上に渡る研究結果から、アーノルド・キアリI型症候群の治療として大後頭孔減圧術(体に負担のかからない術式であっても )を除外しております。
1.4.4 終糸切断手術後に脊髄空洞症の空洞はなくなりますか。
脊髄空洞症は、終糸病によって血行が悪くなった結果、脊髄内に空洞が形成される病気です。終糸システム®適用での終糸切断手術によって脊髄牽引が取り除かれると、すでに形成された空洞がこれ以上悪化することはなく、脊髄内の虚血/浮腫は阻止されます。ロヨ医師の博士論文(「脊髄空洞症の原因論への貢献」, バルセロナ自治大学, 1992)で述べられている通り、術後は多くの症例で脊髄内の空洞が時間とともに減少していく傾向があります。
1.4.5 終糸切断手術で脊柱側弯症の進行は止められますか。
当研究所における脊柱側弯症患者620例の終糸切断手術後の臨床データ(2016年11月まで)によると、脊柱側弯症の弯曲が40度未満であれば、終糸システム®適用での終糸切断手術によって、病気の進行を止められることがわかっています。
1.4.6 脊柱側弯症患者が終糸切断手術を受けたら、背骨を矯正できますか
脊柱側弯症の弯曲が30度未満の患者さんの場合、終糸切断手術後、自然にまたはコルセットの装着や理学療法を行うことで、側弯が改善されることがあります。
1.5 術後
1.5.1 終糸切断手術後にしなければならないことは何ですか(休職の期間、薬、リハビリ、術後検診など)。
終糸切断手術後に一番気をつけなければならないのは、傷口のケアです。術後10日間は、傷口を汚したり濡らしたりすることはできません。手術から10日後、医師に傷口を確認してもらい、許可が出ればシャワーのみ可能です。湯船につかれるのは、手術から約40日経ってからです。
患者さんの傷口の痛み具合によりますが、通常、退院日当日からお仕事や学業など普段の生活を送ることができます。しかし、重いものを持ったり、傷口に負担のかかる体勢や動作を行うことはできません。
手術から約40日後に術後検診が行われ、傷口の状態や患者さんの病状によって、リハビリ、理学療法、スポーツなどの提案をしております。また、手術から1年後に再度術後検診が行われ、その際には術前に撮ったMRI検査と同じ部位の撮影をお願いしております。
1.5.2 終糸切断手術が終わって、日本に帰国しました。傷口から血や膿のようなものが出ているのですが、どうしたらいいのでしょうか。
術後まもない患者さんで、すでにバルセロナを出発された方は、すぐに緊急外来、またはかかりつけの医師、外科医に診てもらってください。傷口の状態が分かり次第、当研究所の医師から傷口の適切な対処法を提案させていただきます。
1.5.3 終糸切断手術を受けてから普通の生活に戻れるまで、どのぐらいかかりますか。
終糸切断手術後、傷口が治癒するまで少なくとも40日間はかかります。最初の10日間は傷口を濡らさないことを徹底し、その後医師の許可が出ればシャワーのみ可能です(湯船には術後40日経ってからです)。
帰国後はすぐに仕事や学業に復帰できますが、重いものを持ったり、傷口に負担のかかる体勢や動作は、傷口の治癒に影響するので控えてください。術後は力を入れない普段通りの生活を心がけてください。
術後1ヶ月半後に行われる術後検診で、患者さんに合わせた理学療法や運動、スポーツなどをご提案しています。
1.5.4 終糸システム®を適用して終糸切断手術を受けた後、症状はよくなりますか。病気の症状が出る前の状態に戻ることができますか。
終糸切断手術は病気の原因を取り除き、病気の進行を止めるために行われる外科治療であるため、病気自体を治すわけではありません。術後の症状の変化は患者さんそれぞれ異なるため、当研究所の医療チームが術前に患者さんの症状の術後経過を予測することはできませんが、術後多くの患者さんに症状の改善が確認されています。手術から数ヶ月または数年かけてゆっくりと症状がよくなったり安定したり、あるいは症状が消えたりすることがあります。
1.5.5 終糸切断手術後すぐは明らかな改善が見られたのですが、術後少ししてから悪化しているような気がします。どうしてでしょうか。
終糸切断手術後、術前にあった症状の度合いや頻度、症状の持続時間が減少または増加するなど、数ヶ月は不安定になることがありますが、それは一時的なものです。患者さんの多くは通常、手術から約1年後に症状が落ち着き始めますが、患者さんによっては手術直後から、または1年半から2年以上かかる場合もあります。
また、術後経過が良好だった患者さんでも、ストレス、疲労、外傷、薬物療法、生理不順、生活の質の低下によって、術前にあった症状が現れることがあります。通常は、上記の不調が改善されることで、終糸病による症状も安定していきます。術前術後の症状の変化については、専門家のもとで経過観察を行い、長期的な観察をしていく必要があります。
1.5.6 終糸切断手術後に理学療法を提案されました。どのくらいの期間行わなければなりませんか。
当研究所では、スペイン国外の理学療法の専門家と医療提携を行っており、独自の理学療法計画「マンティア-ロヨ計画」に従って患者さんのリハビリを行っていますので、お住まいの国に提携医師がいる場合には、そちらで患者さんに合わせたリハビリプランをご提供しております。
提携機関での治療が難しい場合には、当研究所の医療チームから必要なリハビリが記載された報告書をご用意させていただきます。
1.5.7 理学療法を受けるためにリハビリセンターに行ったのですが、外国で手術を受けたからそこではリハビリはできないと言われました。どうすればいいですか。
当研究所では、スペイン国外の終糸システム®認可機関のリハビリ専門施設と医療提携しており、独自の理学療法計画「マンティア-ロヨ計画」に従って患者さんのリハビリを行っています。
母国で術後のリハビリを受けられない場合は、当研究所の提携機関でリハビリを受け、 国に帰ってからもリハビリを継続できるように患者さんそれぞれに合った治療を提供しています。
提携機関での治療が難しい場合には、当研究所の医療チームから必要なリハビリが記載された報告書をご用意させていただきます。
1.5.8 終糸切断手術後、中・長期的な症状の変化を教えてください。
終糸切断手術後、術前にあった症状が一時的に不安定になることがありますが、早くて数週間から数ヶ月、長くても1、2年ほどで落ち着きます。
また、病気によって機能停止していた神経系は、その損傷が可逆的損傷の場合、数年または10年から15年かけて修復し、本来の機能を取り戻すことがわかっています。
一方で、術前からすでに病気の影響を強く受けていた患者さんの場合は、終糸切断手術を受けても術後の回復が非常に緩やかなため、中期的に見るとあまり満足のいくものではないかもしれません。しかし、長期的に見ると、ゆっくり時間をかけて病気による損傷が修復され、術後の経過に改善が見られることが確認されています。