最終更新日: 05/02/2019, ミゲル・ロヨ医師, 登録番号: 10389. 脳神経外科医、神経内科医
特発性脊髄空洞症は脊髄内に空洞ができる病気で、症状は脊髄損傷によるものが主で、特に温覚異常が見られます。
図1 終糸の牽引で脊髄が虚血状態になり、壊死が起こっている図。脊髄内に間質液が現れ、空洞が形成されます。
記述:脊髄空洞症についての記述は、1546年のエティエンヌ(Estienne)による“La dissection des parties du corps humain(シャルル・エティエンヌの人体解剖所)”で初めて報告されています。
命名:1824年にパリにて解剖学者のCharles Prosper Ollivier d’Angers (1796–1845)が”Traité de la moelle epinière et ses maladies”内で脊髄空洞症と命名しました。
罹患率:終糸システム®の基準に従うと、人口100万人に対し脊髄空洞症患者は84名となり、従来考えられていた罹患率よりも高くなります。
脊髄空洞症で頻繁に確認される症状を多い順に列挙すると、手足の痛み、頸痛、温覚異常、痛覚異常、腰痛、胸痛(背部痛)、頭痛、歩行障害、麻痺、括約筋障害です。
A. 特発性脊髄空洞症(または一次性脊髄空洞症):脊髄内に空洞ができる原因不明の脊髄空洞症。
B. 二次性脊髄空洞症:二次性脊髄空洞症は、腫瘍、外傷、感染などによって脊髄内に間質液のつまった空洞が現れます。この空洞はおそらく腫瘍、外傷、感染などの高侵襲の影響によるもの、あるいは圧迫や牽引、もしくはその3つのいずれかの組み合わせで脊髄実質の壊死が起こり、形成された可能性があります。
– 従来の見解
-当研究所の治療計画「終糸システム®」による見解
当研究所のロヨ脳神経外科医の見解によると、特発性脊髄空洞症の空洞は、緊張性終糸(MRIなどの画像では明らかにならない)が引き起こす脊髄の引っ張り=牽引によって脊髄内が虚血状態になり、神経組織の壊死をもたらし、その結果、脊髄内に間質液が現れ、空洞が形成されます。空洞が悪化すると、空洞周辺の空間や上衣管に髄液が漏れ、空洞内の間質液が髄液に入れ替わります。
-終糸病
ロヨ医師の研究を基に発表された博士論文(1992)の結果、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症、扁平頭蓋底、頭蓋底陥入症、歯突起後屈、脳幹のよじれなどの原因不明と考えられていたものが、終糸病という脊髄と全神経に対する牽引から起こっていることが明らかになりました。
終糸病において、全神経系にかかる牽引はすべてのヒト胚で起こっており、程度の差はあっても影響を与えており、その程度や形は様々です。椎間板ヘルニア、脳小血管病、椎間関節症、バーストラップ病、線維筋痛症、慢性疲労、夜尿症、尿失禁、下半身の筋力低下などの原因も終糸病に付随しています。終糸病の正確な診断、治療、術後の経過観察などを明確にするため、独自の治療計画「終糸システム®」を立案しました。
脊髄空洞症のリスク要因は、以下の通りです。
脊髄空洞症の合併症は、終糸病の牽引が引き起こす脊髄への影響、脊髄内の血行不良の状態によって異なりますが、例えば運動感覚機能の悪化を引き起こし、重篤な合併症につながる恐れがあります。
特発性脊髄空洞症の治療として従来行われるのは、空洞短絡術といわれる外科治療です。脊髄に小さな穴をあけて空洞内にカテーテルを挿入し、空洞内に溜まった液体をカテーテルでクモ膜下腔や腹腔に流します。外科治療が適用になるのは、症状が見られる患者さんで、病気の悪化によって命にかかわる場合などに行われます。しかし、空洞短絡術によって脊髄空洞症の原因を取り除くことはできず、脊髄に穴をあける空洞短絡術は、逆に脊髄の損傷を助長することになります。よって、当研究所では空洞短絡術の実施に反対しています。
一方、当研究所のロヨ医師が発表した博士論文によって、脊髄空洞症などの原因が、脊髄の末端にある終糸が全神経系を下に引っ張っているためだと明らかになったことで、1993年から外科治療によって終糸を切断しキアリ奇形の原因を取り除く、終糸切断手術という新しい治療法が生み出されました。当研究所で行われている終糸切断手術は、身体に負担の少ない手術であり、病気の症状の有無に関わらず手術が行われ、病気の進行を阻止できます。
バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所の独自の治療計画、終糸システム®を適用して終糸切断手術を行い、現在までに1500名以上の脊髄空洞症(アーノルド・キアリI型症候群または脊柱側弯症も含む)患者さんが治療を受けられました。終糸切断手術の目的は、病気の進行を止め、これ以上脊髄内の空洞の悪化を阻止することですが、術後に症状が改善された例や、脊髄空洞症の空洞の減少が確認できています。
症例
症例番号1178
2008
2009
2010
2006
2014
2010
2011
2016
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