バルセロナキアリ研究所では、アーノルド・キアリI型症候群や特発性脊髄空洞症といった希少疾患が含まれる終糸病および神経頭蓋脊柱症候群の研究に、2008年から取り組んでまいりました。 医学雑誌の「ランセット・グローバルヘルス」誌の著者らは、昨年2024年の世界希少・難治性疾患の日に、今後も病気に対する根強い取り組みが必要になるだろうと述べ、希少・難治性疾患の早期の正確な診断と効果的な治療に対する緊急の対応が必要であると強調しました。また、希少・難治性疾患で苦しむ人々のニーズに応えるため、希少・難治性疾患の診療にメンタルヘルスを考慮した総合的なアプローチが、病気の研究を促進する上で不可欠と述べました(The landscape for rare diseases in 2024, The Lancet, Vol 12, March 2024)。 当研究所で治療にあたっているキアリ奇形、脊髄空洞症、脊柱側弯症などの治療に関して、「早期に正確な診断を得ることが不可欠である」という意見に同意しており、MRI画像診断においては、放射線科や脳神経外科では軽視されがちな画像の特徴、例えば数ミリの小脳扁桃の下垂(アーノルド・キアリ奇形I型とはみなされない)、小脳扁桃の大後頭孔への圧迫(アーノルド・キアリ奇形0 型と診断されない)、脊髄空洞症の初期段階である脊髄内の浮腫または虚血状態、神経頭蓋脊柱症候群に見られる典型的な病状である脊髄の緊張状態、脊柱の偏位、脊髄円錐の低位など、画像診断では重要視されず、よって早期診断ができない傾向があります。 表1: 患者373名における症状の頻度(終糸病と神経頭蓋脊柱症候群の定義、臨床像および画像の特徴, Royo et al., BMC Neurology 2020)。 表2: 患者373人の徴候の頻度(終糸病と神経頭蓋脊柱症候群の定義、臨床像および画像の特徴, Royo et al., BMC Neurology 2020)。 病気の症状や徴候に関していうと、終糸病の臨床像は当研究所の医療チームが発表したように、多種多様である可能性があるということが医療現場で周知されていません(表1および表2参照)。実際多くの患者さんは、かかりつけ医から専門医に辿り着くまで、依然として長い時間を要し、専門医でも終糸病の症状が広範囲に及ぶことを知らない医師が多くいます。 また、終糸病の病状、特にアーノルド・キアリI型症候群の神経-心理学的症状について記述した医学文献がすでに相当数あるにもかかわらず、MRI画像上で異常があっても、患者さんに心療内科や精神科の受診を勧めたり、通常軽度の異常である場合には上記専門家を紹介されることもありません。 早期診断によって健康状態と生活の質を向上させることができるため、早期に正確な診断を受けることは極めて重要で、当研究所では患者さんにはできるだけ早く当研究所を受診し、小脳扁桃下垂(アーノルド・キアリI型症候群)や軽度の脊柱側弯症、さらには初期段階の脊髄空洞症を発見することをご提案しています(それら全ては専門医や放射線技師からは重要視されていなかった臨床像)。 2025年の世界希少・難治性疾患の日に際して、当研究所では患者さんが早期発見・早期治療を受けるために必要な全てのガイドラインを含む、体に負担の少ない適切な治療を受ける重要性を訴えます。当研究所の治療計画「終糸システム®」で提案されているように、できるだけ早く治療を行うことにより、神経学的悪化の改善、緩和、病気の進行を防ぐのに役立ち、生活の質を向上することができます。