終糸病は先天性の疾患であり、その発症時期や進行の仕方は患者さんによって大きく異なります。ヒトの胚発生の段階から中枢神経系や脊柱の発達に影響を及ぼし、生涯を通じて徐々に症状が進行していく場合があります。
診断
当研究所の症例から観察される終糸病によって引き起こされる病態は、以下の通りです。
・アーノルド・キアリI 型症候群(小脳扁桃下垂):本疾患では、小脳扁桃の下垂が早期から進行することがあり、生後数か月の段階ですでに認められる場合があります。乳児に何らかの理由で MRI 検査を実施した際、偶発的に確認されることもあります。
・特発性脊髄空洞症:脊髄空洞症は脊髄組織を徐々に損傷し、臨床症状と病変の大きさが必ずしも一致しない多様な影響を及ぼします。広範囲にわたる空洞を有していても症状が軽度な場合がある一方、わずか一椎体程度の小さな嚢胞でも、日常生活に支障をきたす複雑な症状を引き起こす場合があります。発見は、症状の出現を契機とするか、あるいは MRI 検査で偶然見つかる形が一般的です。
・特発性脊柱側弯症:脊柱側弯症は脊柱が側方に弯曲する病態で、後弯や過前弯、さらに横断面での回旋を伴う回旋側弯など、多面的な変形を呈し得ます。幼少期から思春期にかけて徐々に進行することがあり、特に思春期のホルモン変化により悪化しやすい傾向があります。成長期の身体活動に伴う痛み、姿勢異常などから、小児科医が定期検診や受診の際に発見することがあります。
終糸病には遺伝的要素が関与する可能性があることから、患者さんのご家族、特に直系血族に対しては、小児科医と相談のうえ、終糸病の有無を確認するための精密検査を検討することが推奨されます。
治療法
終糸は、キアリ奇形、脊髄空洞症、脊柱側弯症などにおいて、中枢神経系全体へ過度な牽引力を伝える組織であり、患者さんにさまざまな可逆的・不可逆的損傷を引き起こすことがあります。
終糸システム®による治療の主な目的は、病名を正確に診断するとともに、外科的介入によって病態の進行を阻止し、その後の薬物療法や理学療法により可逆的な損傷の回復を促すことにあります。
このため、キアリ奇形、脊髄空洞症、脊柱側弯症のいずれかが確定診断された時点で、特に若年患者においては、乳幼児期からでも終糸システム®の早期適用が推奨されます。これは、成長期の患者さんの精神運動機能の制限や症状悪化を防ぎ、成長過程への影響を最小限に抑えることを目的としたものです。当研究所では、ロヨ医師率いる脳神経外科チームにより終糸切断手術を受けた 2425 名の患者のうち、0~10 歳が 4%、10~16 歳が 5% を占めており、最も若い症例では生後 4 か月で手術が実施されています。
通常、乳幼児患者に対しては、安全性を最優先し全身麻酔で手術が行われます。手術は低侵襲技術を用いて尾骨部に数センチの切開を行うもので、感染や血腫などのリスクは最小限に抑えられます。16 歳以上は成人として扱われ、禁忌がなければ局所麻酔に鎮静を併用した方法が選択されますが、最終的な麻酔方法は麻酔科医の基準やプロトコルに従って決定されます。
多くの患者さんは手術後 24 時間の入院を経て退院しますが、おむつを使用している患者さんの場合、創部の汚染を避けるため特別な管理が必要となり、入院期間が延長されることがあります。
乳幼児患者の保護者は、入院手続きから麻酔導入室、術後回復室まで、入院中のすべてのプロセスに付き添うことができます。同伴者 1 名は患者さんと同じ病室に宿泊でき、日中は複数の家族が同時に面会することも可能です。
成果
終糸システム®を未成年患者に適用した治療は 30 年以上に及び、その成果は統計的に他の年齢層と同等であり、終糸病の進行を抑制できていることが確認されています。終糸切断手術の実施により、多くの症例で症状の軽減、改善、あるいは消失が認められ、成長期の段階からの自立した生活や生活の質(QOL)の向上につながっています。
さらに術後には、身長・体重の成長曲線、認知機能、精神運動機能、場合によっては行動面など、年齢に応じた発達の回復が認められることがあります。
小児および若年患者さんのご家族による体験談は、以下のリンクからご覧いただけます。
また、以下のリンクから、当研究所で治療を受けたアーノルド・キアリI型症候群のお子さんを持つ保護者の方へのインタビュー動画をご覧いただけます。