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バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所

潜在性脊髄係留症候群

最終更新日: 28/11/2023, ミゲル・ロヨ医師登録番号: 10389. 脳神経外科医、神経内科医

定義

通常、脊髄は脊柱管内で歯状靭帯と終糸(脊髄円錐を第一尾椎をつなぐ組織)によって支えられています。

しかし、潜在性二分脊椎によって脊柱管内にある脊髄の動きに制限がかかると脊髄が固定され、この状態を脊髄係留症候群と呼びます。脊髄係留症候群は、先天性と後天性のものに分かれ、潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群は、先天性のものです。

潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群は、神経-脊髄の奇形で、脊髄の不完全な形成(特に腰背部)によって脊髄が固定され、その牽引が主に脊髄と脊柱に機械的損傷をもたらします(図1)。

潜在性二分脊椎は外部から異常が確認できないもので、一つまたは複数の椎骨に小さな隙間や穴ができます。二分脊椎の中で最も軽度で頻繁に見られる二分脊椎です。

しかし、新生児の場合、脊椎欠損部の上に例えば母斑や異常毛髪、皮膚陥凹など目に見える異常が確認されることがあります。

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診断

潜在性二分脊椎は、出生時にすでに存在している可能性はありますが、ほとんどの患者は、20年ほど、特に思春期に神経学的症状や徴候が進行していくので、通常、診断名がつくのは成人になってからです。実際、患者の多くは、他の理由で行われた検査画像を通して、潜在性二分脊椎が見つかります。潜在性二分脊椎と診断するためには、MRI検査、CTスキャン、または固定が確認される脊椎部のX線検査の実施が必要です。


症状

通常、潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群では脊髄神経に損傷を与えないため、患者は生涯ずっと徴候や症状がない場合や、何十年も症状が軽度という場合があります。

症状は皮膚に見られる以外に、主に下肢の感覚・運動障害、下肢の脱力感による歩行困難、夜尿症や繰り返される尿路感染症などの括約筋機能障害、また特に腰部、坐骨神経痛などの痛みを伴う症状が現れます。

神経学的症状が出てきた場合、多くは治ることはありません。したがって、早期発見・早期治療が重要になってきます。


原因

潜在性二分脊椎の原因、およびその結果として引き起こされる脊髄係留症候群の原因は、遺伝的要因、環境要因、および家族歴によるものです。これらは神経管の欠陥と葉酸欠乏症に関連している可能性があります。

通常、神経管は妊娠の初期段階で形成され、妊娠28日までに閉鎖しますが、軽度の潜在性二分脊椎を持つ乳児は、神経管の一部が形成されない、または適切に閉鎖されないため、脊椎および/または椎骨の発達に欠陥を生じます。この異常は、妊娠中の葉酸低値によるものと考えられています。


リスク要因

潜在性二分脊椎の形成を高めるリスク要因はいくつかあります。

  • 女性: 女性は男性よりも潜在性二分脊椎を患うリスクが高い傾向にあります。
  • 家族歴: 潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群が起こる傾向は、特に神経管欠陥に関連した遺伝的要因があります。
  • 葉酸欠乏症またはその他の代謝・環境要因: これらは妊娠中の神経管欠陥の一因となる可能性のある要因です。

合併症

潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群の最初の合併症は、その名の通り「脊髄の係留」であり、これは段階的に悪化していきます。潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群患者で確認される合併症には次のものがあります。

  • 下肢の脱力感を伴う括約筋への影響をもたらす緩やかな進行性の神経学的悪化。
  • 疼痛、特に腰痛の悪化と下肢の感覚障害によって生じる患者の生活の質の悪化。
  • 脊髄損傷および関連疾患:潜在性二分脊椎によって生じた症状の不可逆的な状態が複雑化し、泌尿器科および整形外科に関連する病気が発生する可能性があります。

治療法

潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群の唯一の治療法は、外科的治療です。係留のレベルがわかった時点で、脊髄の癒着を除去するために最も適切な外科的治療法が適用されます。

いつ、どのような術式で、どのレベルで手術を行うかの決定は、症例によって異なるため、脳神経外科医の判断に委ねられます。患者に症状が現れるまで、あるいは症状が悪化するまで外科治療を待つことを提案する専門家もいますが、神経学的症状は不可逆的なものもあるため、症状の発症を防ぐため予防的に手術を行う医師もいます。


成果

当研究所では、終糸病の治療を専門にする医療機関であり、終糸病は潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群と混同されることが多くあります。

当研究所で採用している独自の治療計画「終糸システム®」は、終糸病に対して高度な低侵襲治療を提供するだけではなく、潜在性二分脊椎を伴った脊髄係留症候群に対する脊髄解放も行うことができます。患者それぞれに対して可能な限り低侵襲で最も適切かつ効果的な外科的治療を適用しています。

当研究所の治療の成果は優れており、合計83件の外科的治療において、死亡率および神経学的合併症の発生率はゼロです。


参考文献

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