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バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所

ニュース・お知らせ

2022年2月28日 世界希少・難治性疾患の日

ICSEB によって発行 29 2月, 2024 患者の同意を得て

希少疾患は「希少」という名前にもかかわらず、世界中で驚くほど多くの人が希少疾患にかかっています。「希少」と呼ばれる理由として、その病気の原因が不明であることが挙げられます。

医学では、希少疾患の多くは遺伝的要素を持つと考えられており、たとえ症状が後になって現れたとしても、妊娠時または出産時にすでに発生していると考えられています。希少疾患によっては遺伝的要因と環境的要因の組み合わせによって発生する疾患もあります。診断の遅れによって不適的な治療が行われ、更なる合併症の発生の可能性があるため、早期診断が非常に重要になってきますが、その希少性により、病気に関する知識が乏しく、十分な研究も行われていないため、正しい診断と治療が見つかるまでに長い時間を要することがあります。

アーノルド・キアリ0型/I型症候群(キアリ奇形)、特発性脊髄空洞症は、当研究所で専門的に研究と治療が行われている疾患ですが、これらの疾患は出生時またはその後に現れる可能性があり、時にはある外傷によって全ての症状が引き起こされるため、正しい診断、治療法に辿り着くまでに時間がかかり、その間に症状の悪化を引き起こすことがあります。

当研究所の創設者であるロヨ・サルバドール医師の研究により、キアリ奇形、脊髄空洞症を含む終糸病が先天性の要因で起こっていることがわかり、これは胎児の発育の段階で起こり、家族の中で複数の人がこの病気を患う可能性があります。

今年、2024年の世界希少・難治性疾患の日に際し、当研究所ではキアリ奇形および脊髄空洞症を含む終糸病/神経頭蓋脊柱症候群に関する研究を促進し、終糸による牽引がどのように神経系に影響を与え病気を引き起こすのかを広め、終糸病患者に対する早期診断と早期治療が行われるよう取り組んでいきます。

キアリ奇形、脊髄空洞症が「希少」疾患ではなくなる未来のため、そして患者さんの生活の質の向上を目指すために、キアリ&脊柱側弯症&脊髄空洞症基金(https://chiarifoundationbcn.com/en/donation-chiari-foundation/)への寄付を通して、更なる病気への研究にご支援ください。

神経頭蓋脊柱症候群と尾骨脱臼の予備的研究

ICSEB によって発行 22 12月, 2023 患者の同意を得て

当研究所のロヨ・サルバドール所長を中心とする医療チームが執筆した、神経頭蓋脊柱症候群と尾骨前方脱臼の関連性に関する最新論文「尾骨脱臼に関連する神経頭蓋脊柱症候群:予備的研究」が、脳神経外科雑誌『World Neurosurgery:X』に掲載されました。 

「神経頭蓋脊柱症候群は、いくつかの特発性疾患(アーノルド・キアリ症候群0,1型および1,5型、脊柱側弯症、脊髄空洞症)を含みますが、これは終糸と呼ばれる線維組織によって神経軸に異常な牽引が生じることで引き起こされる」とし、終糸が尾骨レベルに達する組織であることを考慮した上で、神経頭蓋脊柱症候群という診断を受けた多くの症例で「尾骨の前方脱臼といった解剖学的変異によって、終糸が引き起こした中枢神経系全体にかかる牽引をさらに悪化させる可能性」を、ロヨ医師率いる神経外科医チームは長年観察してきました。

 

論文では、「神経頭蓋脊柱症候群患者における尾骨脱臼の有病率の高さが、それらの間に関連性があることを示唆している」と結論づけ、「尾骨前方脱臼を引き起こすメカニズムは、神経頭蓋脊柱症候群の発症に直接影響を与える可能性がある」と述べています。

通常、尾骨脱臼の場合、ほとんどの外傷および整形外科で提示される治療は、保存療法(尾骨に体重をかけない、座ることを避けるまたは減らす、座る際の負荷を軽減するクッションや器具の使用などの推奨)ですが、残念ながら神経頭蓋脊柱症候群である可能性が考慮されないために神経頭蓋脊柱症候群の診断は下りず、患者さんの満足いく解決策は提示されずに、患者さんの生活の質に悪影響を与える可能性が出てきます。

当研究所では、これらの症例の長年の臨床観察と治療経験を経て、尾骨脱臼によって生じた終糸の牽引を取り除くため、低侵襲治療を含む当研究所独自の治療計画「終糸システム®」の適用を提案しており、優れた治療効果が得られています。

論文執筆者であるロヨ医師、フィアヨス医師、ビヤビセンシオ医師、そして当研究所の研究開発(R&D)部門チーム、『World Neurosurgery:X』への論文掲載おめでとうございます。

仙尾骨脱臼を伴う神経頭蓋脊柱症候群の治療に関する詳しい情報は、こちらをご覧ください。

小脳扁桃の嵌入(アーノルド・キアリ0型)とは?生活の質にどんな影響があるのか。

ICSEB によって発行 17 11月, 2023 患者の同意を得て

現在、脳神経外科分野では、アーノルド・キアリ症候群の診断について議論がなされています。小脳扁桃は、小脳の下部にある解剖学的構造で、大後頭孔の境界内の頭蓋骨内にあります。小脳扁桃の下垂が 3mm、5mmmまたは7mmを超え(研究者によって異なる)、脊髄に他の奇形が見られない場合にアーノルド・キアリ症候群I型と診断されます。

2018年から2020年の時点で、一部の著者はアーノルド・キアリ症候群の分類に、0型、1、5型、そしてV型といった新しい分類を追加しています。小脳扁桃のわずかな下垂でもアーノルド・キアリ症候群の症状を引き起こす可能性があるとする考えが減少傾向にある中、現在最も疑問が生じているのは、アーノルド・キアリ0型症候群の診断です。

最近の文献で、ある著者はアーノルド・キアリ症候群0型は脊髄空洞症がない患者、または小脳扁桃下垂が最小限で、後頭部痛、後頸部痛、脊髄小脳の機能不全などのキアリ奇形I型の典型的な症状や徴候を伴う患者を表現するために使用されると報告していますが、それに異議を唱える研究者もいます。

ロヨ医師率いる医療チームは、終糸病患者において、キアリ奇形に関連する症状の重症度が小脳扁桃の下垂の大きさと直接関係していない例が複数あることを観察しており、小脳扁桃の明らかな下垂がない患者においても、アーノルド・キアリI型症候群と同様の臨床像が存在していることを確認しています。実際、小脳扁桃下垂の原因となる終糸病に関する研究の観点から、MRI画像上

における終糸病の表現である可能性のある状態には次のようなものがあります。

「McRae線で表される大後頭孔より下の小脳扁桃の一方または両方の下垂…また、小脳扁桃のMcRae線との接触または密接さを初期の小脳扁桃下垂とみなし、小脳扁桃の嵌入と定義します。これは、他の著者がキアリ奇形0型と呼ぶ状態と同等のものです。」

小脳扁桃の嵌入がわかった患者さんにとって、大後頭孔への小脳扁桃の下垂が3mmを超えない場合でも、MRI画像において確認可能であり、アーノルド・キアリI型症候群患者と同様に、生活の質に影響を与える症状が見られる可能性があることを知っておくことは非常に重要です。

当研究所では、アーノルド・キアリ 0 型患者にも有効な治療法である独自の治療計画、終糸システム® を提供しており、優れた成果が得られています。これは、緊張状態にある終糸による牽引が小脳扁桃にはほとんど影響を与えていなくても、多くの症状を引き起こす可能性があることを示しています。低侵襲治療の終糸切断手術によって症状の改善または消失につながり、患者さんの生活の質を取り戻すことができています。

 

参考文献

  • Arnold Chiari Malformation Joaquin A. Hidalgo; Craig A. Tork; Matthew Varacallo. M. StatPearls Publishing; 2023 Jan. 2022 Sep 5.
  • Ventrolateral Tonsillar Position Defines Novel Chiari 0.5 Classification; Peter F. Morgenstern, Umberto Tosi; World Neurosurg 2020 Apr;136:444-453. doi: 10.1016/j.wneu.2020.01.147.
  • Is there a relationship between the extent of tonsillar ectopia and the severity of the clinical Chiari syndrome?; Heffez DS, Broderick J, Connor M,
  • Mitchell M, Galezowska J, Golchini R, Ghorai J. 2020 Jul;162(7):1531-1538.
  • The Filum disease and the Neuro-Cranio-vertebral syndrome: definition, clinical picture and imaging features, BMC Neurology 2020 20:175.
 

終糸システム®によってアーノルド・キアリI型症候群の原因を取り除くことができる。

ICSEB によって発行 6 10月, 2023 患者の同意を得て

図1: ある患者の術後のMRI画像。終糸システム®適用で行われた終糸切断手術から6年後に撮影されたMRI画像では、6年前に確認された明らかな小脳扁桃下垂は見られなくなっています。

終糸病および神経頭蓋脊柱症候群は、MRIなどの検査画像上では例えばアーノルド・キアリI型症候群と呼ばれる大後頭孔からの小脳扁桃下垂などが確認できます。

当研究所のロヨ医師率いる医療チームは、病気の原因を取り除き、病気の症状や徴候はもちろん、病気自体の進行を止めることを目的に、キアリ奇形I型患者に終糸システム®を適用します。

終糸と呼ばれる繊維を切ることで、小脳扁桃の下垂の悪化を防ぎ、なおかつ神経系全体にかかっていた牽引を取り除き、可逆性の細胞の機能や損傷の回復を期待することができ、患者さんによっては、術後に小脳扁桃下垂の上昇が確認できるケースもあります。

この小脳扁桃下垂の上昇は、当研究所で確認できた症例で、術後1、2年経ってから、または5年から10年の間など様々です(図1参照)。

当研究所で行われる治療は、小脳扁桃がある場所とは違う部分で行われる外科治療であるにもかかわらず、術後に小脳扁桃の位置に変化が見られ、なおかつ患者さん自身が症状の改善を感じられるということは、当研究所医療チームにとっては、「終糸切断手術によって病気の原因が取り除かれ、脊髄、脳幹、そして脊椎が緊張性終糸から解放された」ことを意味しています。

上記の理由から、30年間の治療実績も含め、当研究所が提供する終糸システム®によって、アーノルド・キアリI型症候群の進行を止めることができると断言することができます。患者さんの症状の改善および医師側が確認できる徴候の改善、そしてある症例においては小脳扁桃下垂の上昇も見られ、それらは患者さんの生活の質の向上にもつながっています。

参考文献
Royo-Salvador, MB, Fiallos-Rivera, MV, Salca, HC et al. BMC Neurol 20, 175 (2020) Royo Salvador MB. Filum System® Guía breve. Mar 2015.

2023年9月28日:アーノルド・キアリ症候群の国際デー

ICSEB によって発行 28 9月, 2023 患者の同意を得て

今年も、アーノルド・キアリ症候群に対するより深い理解と、患者さんの生活の質の向上を願い、このアーノルド・キアリ症候群の国際デーをみなさんと一緒に祝いたいと思います。

約50年前、ミゲル・ロヨ=サルバドール医師はアーノルド・キアリI型症候群(小脳扁桃下垂)の原因である終糸病を突き止め、それ以来、原因を取り除き、病気の進行を阻止するための外科的治療を提供するための最良の術式を研究し、1997年に論文を発表、独自の低侵襲治療の治療計画「終糸システム®」を完成させ、2005年にその成果が得られています(https://institutchiaribcn.com/jp/ミゲル-b・ロヨ-サルバドール医師/)。

現在、当研究所 ではアーノルド・キアリI型症候群(小脳扁桃下垂)の患者さん1500名以上に治療を行い、病気の進行を止められたほか、ある例では小脳扁桃下垂の上昇を確認できるなど、良い成績を収めています。現在までに大きな合併症は発症しておらず、患者さんの94,6%は、長期的に見て(手術から15〜20年の術後検診を通して)生活の質が向上していると認識しています。

当研究所創設以来、ロヨ医師率いる医療チームは、対面診療およびオンライン診療を通して、2600名以上の患者さんに対して終糸病を患っていることを確認しました。また、キアリ奇形は遺伝的要因の可能性のある先天性疾患であることから、患者さんの家族のメンバーで、同じようにキアリ奇形の病状が確認され、外科治療を受けています。

当研究所チームで得られた治療の成果、そして患者さんが得られた病状の改善によって、当研究所の治療計画がより多くの専門家の理解を得られ、アーノルド・キアリ症候群を患う患者さんが適切な治療法を選択できるようになることを願っています。

祝15周年バルセロナキアリ研究所

ICSEB によって発行 12 6月, 2023 患者の同意を得て

この度、バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所は創立15周年を迎えることができ、当研究所スタッフ一同大変嬉しく思っております。

この15年間、当研究所ではアーノルド・キアリI型症候群特発性脊髄空洞症特発性脊柱側弯症で苦しむ方々の健康を改善するために尽力してきました。

当研究所は2008年に設立されて以来、上記疾患の診断と治療の先駆者として治療にあたり、当研究所で行われた初診は3000件を超え、5大陸85カ国から2100名以上の患者さんに終糸システム®を適用して、低侵襲治療の終糸切断手術を行いました。それにより、病気の原因である「先天的な緊張性終糸による全神経系の牽引」を取り除き、病気の進行を阻止することができました。

当研究所スタッフ一同、患者さんを通して、病気を乗り越える勇気と将来への希望を目の当たりにし、患者さん一人ひとりに寄り添うことの大切さ、尊重することの重要性を学びました。当研究所を信頼してくださった患者さんとそのご家族に、今一度感謝申し上げます。

私たちの使命は、今後も最高の医療を提供し、患者さんに健康的で充実した生活を提供することです。当研究所医療チームはもちろん、提携機関、提携医師によるオンライン医療相談、診察、治療、術後ケアといった献身的な長期フォローアップのおかげで、当研究所で素晴らしい治療成績を得られ、多くの人々の生活に変化をもたらすことができました。

15周という記念日と、これまでの治療の成果を通して、今後も熱意を持って治療に取り組み、医療の最前線で研究を推進し、患者さんの生活の質の向上のため取り組んでいきたいと思っております。

この機会に終糸病とその他関連疾患に関する知識を共有し、当研究所15周年を皆さまとお祝いできたらと思っております。

この15年間の旅路を共に歩んでくださった方々に、感謝申し上げます。

終糸システム ® によって脊髄空洞症の進行を止め、時間の経過とともに空洞が消 失する可能性があります。

ICSEB によって発行 5 5月, 2023 患者の同意を得て
図1 終糸システム適用®で終糸切断手術を受けた患者さんの術前術後のMRI画像。術後7年間で脊髄内の空洞が消失しています。

脊髄空洞症は、脊髄内に一つまたは複数の嚢胞ができ、通常、全身の神経障害を伴い、代表的な症状は、上下肢の痛み、頸痛、温覚および痛覚の感覚異常、腰痛、背部痛、頭痛、歩行障害、麻痺、括約筋障害などです。脊髄空洞症患者は、慢性的な痛みを伴う生活を強いられ、それは自律性の喪失へとつながります。
当研究所では特発性脊髄空洞症の治療にあたっており、当研究所のロヨ=サルバドール所長の理論によると、脊髄空洞症は終糸病によるもので、検査画像上では確認できない緊張性終糸の牽引によって脊髄内が虚血状態となり、空洞が形成されると考えられています。
当研究所が提供している治療は、当研究所独自の治療計画である終糸システム®を適用して行われる低侵襲治療の終糸切断手術であり、脊髄空洞症の原因を排除し、病気の進行を止めることを目的に行われます。
ロヨ医師が1993年に初めて脊髄空洞症の原因を突き止めてから30年が経ちますが、当研究所医療チームは、終糸システム®を適用して脊髄空洞症を治療することで、優れた成果をあげられることを実証することができました。
当研究所医療チームのフィアリョス医師は、「当研究所の治療で脊髄空洞症の進行を止め、嚢胞がさらに脊髄内組織を取り込むことで壊死が拡大してしまうのを防ぐことができます。これは、治療を受けた患者さんの術後、MRIで確認することができます。それだけではなく、中長期的に見ると、空洞が再吸収され、MRI上では空洞が消失する例もあります(図1)。患者さんによっては、治療後MRI画像上から脊髄空洞症だったことがわからないほどの改善が見られ、それと並行して症状の改善も観察されます。当研究所で行っている治療により、中枢神経系の正しい循環を回復することができ、これまでに得られた成果は、間接的な外科治療の結果であるため、すぐに確認できるものではありませんが、脳神経外科医(客観的)にとっても、患者さん(主観的)にとっても、効果的な治療であることは確かです。当研究所では約7年〜10年後に術後検診を実施し、空洞の減少と患者さんの症状の改善を確認しています」と述べています。

2022年9月28日:アーノルド・キアリ症候群の国際デー

ICSEB によって発行 28 9月, 2022 患者の同意を得て

アーノルド・キアリ症候群の治療に特化した専門機関である当研究所では、今年もアーノルド・キアリ症候群の国際デーを皆様とともに祝いたいと考えています。 アーノルド・キアリI型症候群がどういう病気かわからない方のためにここで説明を加えると、一般的に小脳扁桃が大後頭孔を通って下垂することを意味し、脊髄に奇形は見られません。当研究所所長のロヨ・サルバドール医師の約50年に及ぶ研究によると、小脳扁桃下垂(アーノルド・キアリI型症候群)は、脊髄末端にある終糸が通常よりも緊張状態にあり、神経系全体を引っ張っていることで生じる終糸病が原因であることがわかっています。 アーノルド・キアリI型症候群の症状は主に、頭痛、頸痛、手足の麻痺、視覚障害、手足の疼痛、感覚異常、めまい、 嚥下障害、腰痛、記憶障害、歩行障害、胸痛、平衡感覚障害、痛覚異常、言語障害、括約筋障害、不眠症、嘔吐、失神、震えなどで、時間の経過と共に悪化していく傾向があります。 アーノルド・キアリI型症候群患者の生活の質は、治療法を見つける前に著しく低下する可能性があり、これは進行性の病気という理由だけではなく、一般的に提案される外科治療が、大後頭孔減圧術という大変リスクの高い手術であるためです。病気の悪化によって、手術のリスクよりも病気自体のリスクが高くなるまで、経過観察になるのが一般的です。 一方、終糸システム®と呼ばれる病気の診断と治療法をまとめたロヨ医師の治療計画に従うと、終糸切断手術という低侵襲治療によって、病気の原因と病気が身体へ及ぼす影響を取り除くことができます。 当研究所で適用されるアーノルド・キアリI型症候群に対する終糸システム®の結果は良好で、病気の進行が止められるのはもちろん、術後にいくつかの症状の改善または消失、そして患者さんの生活の質にも改善が見られます。 場合によっては、術後1年またはそれ以上経ってから、患者さんの中にはMRI画像上で小脳扁桃の上昇が観察されることがありますが、重要なのは、終糸によって引き起こされる緊張状態を外科治療によって取り除くことです。 小脳扁桃下垂を伴う終糸病患者さんに捧げられた9月28日という日に、以前には存在しなかった新しい希望、「終糸切断手術」という効果的で低リスクの治療法があることをここで強調したいと思います。

 

終糸病およびバルセロナキアリ研究所研究開発イノベーション部門研究ライン

ICSEB によって発行 27 5月, 2022 患者の同意を得て
当研究所の研究開発イノベーション部門は、ミゲル=B・ロヨ=サルバドール医師の絶え間ない研究と臨床経験を結果として、2014年に正式に設立されました。
ロヨ医師の学術研究の最初の数年間は、ホセ=マリア・ドメネク教授(バルセロナ自治大学医学部の解剖学および発生学の正教授)のサポートのもと、特発性脊髄空洞症とその病因学への理解について研究し、博士論文を発表しました。
その後、終糸によって神経系全体に過度の牽引が起こり、アーノルド・キアリI型症候群、脊髄空洞症、脊柱側弯症、頭蓋底陥入症、扁平頭蓋底、歯状突起奇形、脳幹のよじれなどといった現在まで原因不明と言われていた病気が起こっていたことを理解し、上記疾患を含んだ新しい病気を「終糸病」と命名しました。
ロヨ医師は、「終糸病」という新しい病気の診断を受けた患者さんに対して、低侵襲治療の終糸切断手術を適用し、同時に外科治療の記述、実行、改善が行われ、終糸病とその治療法に関する新しい病理学的概念の研究、および論文執筆に従事してきました。
当研究所においては、終糸病の治療に対して、終糸システム®という、病因、診断、医療、外科治療およびリハビリテーションから構成される専門性の高い治療計画の開発に取り組みました。
2020年、当研究所の研究チームは373例の症例をもとに、病気の臨床診断と画像診断を記述した論文を発表し、特に潜在性脊髄係留症候群と混同されていた部分を明確にし、終糸病と神経頭蓋脊柱症候群の違いについて明らかにしました。
現在、当研究所の研究開発イノベーション部門は、バルセロナ大学、バルセロナ自治大学、およびシマ病院と協力して、終糸病に関連のある全ての分野の研究を進め、技術の進歩、神経学的方法論およびエキスパートシステムの研究を行っています。患者さんの生活の質の向上のため、知識と新しい発見を提供し、医学的、外科的、技術的に患者さんを支援していきたいと考えています。
研究の大部分は、研究普及と治療の社会的支援を行うキアリ&脊柱側弯症&脊髄空洞症基金によって資金提供されており、ロヨ医師は後援者の一人でもあります。基金では、研究活動継続のため、皆様からの温かいご寄付を心よりお待ちしております(https://chiarifoundationbcn.com/donar/ )。
バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所 研究開発イノベーション部門

バルセロナキアリ研究所の新施設

ICSEB によって発行 5 5月, 2022 患者の同意を得て

バルセロナキアリ研究所は、世界中から訪れる患者さんへの診療業務はもちろん、当研究所の研究開発(R&D)業務の更なる向上のため、新施設「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」を開設しました。



新施設「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」は、マヌエル・ジロナ通り32番地に建てられ、工事の進み具合や、「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」の詳細についての問い合わせを多くいただくようになりました。また、当研究所をご存じの方も、そうでない方からも称賛の声をいただいております。そんな当研究所の新施設「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」について、少しここでご紹介したいと思います。


カサ・イクセブ(Casa ICSEB)


当研究所の新しい診療所「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」は、スペイン語で「家」を意味するカサと、バルセロナキアリ奇形&脊髄空洞症&脊柱側弯症研究所(Institut Chiari & Siringomielia & Escoliosis de Barcelona)の頭文字のICSEB(イクセブ)を取って、「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」と名付けられました。
1920年代のスペインのカタルーニャ文学運動の象徴とされる建築物で、現在のラスコルツ区のペドラルベス地区、マヌエル・ジロナ通りとドクトー・フェラン通りが交差する南西の角にあり、都市の重要資産に認定され、バルセロナ歴史遺産の一つとなっています。
1915年4月24日、株式会社不動産開発の取締役社長のアントニ・ミラクラ=イ=メルカデル(Antoni Miracle i Mercader)氏が、当時のサン・ビセンス・ダ・サリア憲法市議会から建築許可を取得し建てた長屋住宅は、数年前からひどい劣化状態のまま放置され、住宅の一部にいたっては不法占拠されていました。
2018年7月、「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」建設という新しいプロジェクトが始動すると、それに伴うバルセロナ市役所遺産・建築および歴史・芸術部門での手続きをはじめ、バルセロナ市役所とバルセロナ市立研究所の公園・庭園部からの建築許可の取得、建築家協会への報告書、予防・消化・救助サービスなどの消防機関への報告書提出などの手続きが始まりました。マヌエル・ジロナ通り32番地にあった長屋住宅は、建築家のホルヘ・ダバロス=エランド(Jorge Dávalos Errando)氏の設計によって増築、修繕・改修工事が行われ、現在の「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」が誕生しました。
2022年04月、新施設「カサ・イクセブ(Casa ICSEB)」での活動がスタートし、世界中から訪れる患者さんへの診療業務だけではなく、バルセロナ自治大学医学部正教授とバルセロナ神経学研究所、およびキアリ&脊柱側弯症&脊髄空洞症基金の支援を受けて、当研究所の研究開発(R&D)業務における、全人類と哺乳類に影響を与える終糸病という神経-頭蓋-脊柱疾患の研究の更なる向上を期待することができます。
当研究所の新しい住所 Paseo Manuel Girona 32, 08034 Barcelona, SPAIN
みなさまのご来訪を心よりお待ちしております。
当研究所は、患者さんに最善の治療法を提供・研究し続けることをお約束いたします。.





2022年2月28日
世界希少・難治性疾患の日

ICSEB によって発行 28 2月, 2022 患者の同意を得て

希少疾患は人口の有病率が低い疾患のことで、具体的に言うと人口10000人に対して5人未満に影響を与える場合に希少疾患と考えられています。 現在、アーノルド・キアリI型症候群特発性脊髄空洞症は、国際ポータルサイトのOrpahnet(オーファネット)の希少疾患分類リストに含まれており、この分類リストに含まれる疾患は、多くの場合、投薬、研究、および治療が不足していることを意味し、利用可能なデータが少ないため有病率は示されていません。 当研究所は脳神経外科を専門とする医療機関で、上記二つの病気を扱っており、 終糸病は、小脳扁桃の下垂や脊髄内の空洞といった形で現れます。これまでの当研究所の経験、そして決疑論に照らし合わせると、MRI検査の実施が増えたことにより、キアリ奇形や脊髄空洞症と診断される例が増えたため(通常は、上記疾患以外の理由でMRI検査が行われ、偶然発見されるケースがほとんどです)、これらの病気は現在までに確認された発生率よりも高い可能性があると考えられます。そして、当研究所の研究開発(R&D)部門でもその研究を行っています。 さらに、数年前から終糸病患者の家族の中にも同様に終糸病との診断を受ける症例が増えてきています。これは、アーノルド・キアリI型症候群(キアリ奇形I型)や特発性脊髄空洞症がそれほど珍しい病気ではないことを意味しますが、現在でもその診断を受けた患者さんは、希少疾患患者と同様、病気に周知している医師・医療機関の不足、専門機関でのケアを受けるために国内および国外を移動しなければならない状況に置かれ、それは患者さんに生活の質(QOL)の低下をもたらします。 今日は世界希少・難治性疾患の日です。希少疾患が存在しているという認識を高め、病気で苦しむ人々によりよい生活を保証するため、適切な診断と治療が受けられるよう促すことを目的としています。世界希少・難治性疾患の日を祝うために、貢献できることがあります。それは、寄附やボランティア活動といった形で、患者さんとその家族の支援をすることです。 終糸病に含まれる病気の支援ご希望の方は、キアリ&脊柱側弯症&脊髄空洞症基金(https://chiarifoundationbcn.com/)のウェブサイトから、寄附をお願いいたします。 “患者さんのよりよい未来のために” #DíaMundialdelasEnefermedadesRaras #EnfermedadesRaras. #世界希少・難治性疾患の日 #希少疾患

終糸病の治療:コロナ禍でのリハビリテーション

ICSEB によって発行 4 2月, 2022 患者の同意を得て

当研究所では脳神経外科の立場から、アーノルド・キアリI型症候群、特発性脊髄空洞症、特発性脊柱側弯症などの終糸病およびその他の関連疾患を治療しております。
終糸病は先天性、潜在性、神経変性、進行性、および慢性疾患で、終糸切断手術によって終糸の緊張状態が取れても、病気自体が引き起こした後遺症を取り除くことはできません。
そのため、終糸病患者の医療ケアには4種類の異なる専門医が必要となってきます。


  • 診断のための神経内科医または脳神経外科医
  • 終糸病および椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの関連疾患の治療のための脳神経外科医または整形外科医
  • 重度の脊柱側弯症のための整形外科医
  • 術後に残った脊椎および神経の後遺症の治療のためのリハビリテーション科専門医または神経内科医

当研究所では、終糸システム®適用での終糸切断手術の効果を高めるため、後遺症のある終糸病患者さんに対する術後の理学療法は欠かせないと考えています。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症パンデミックが始まって以来、残念ながら多くの患者さんが新型コロナウイルス感染症感染防止のため、リハビリテーションセンター、特にプールや水治療法などのリハビリの継続が難しくなっているようです。
術後中長期の患者さんには、可能な限りで構いませんので、リハビリテーション科専門医ガイドラインに従って、家族や周りのサポートを受けながら、理学療法を継続することを推奨いたします。
患者さんがお住まいの地域の理学療法士が、終糸病と当研究所の治療法についてご質問がある場合は、当研究所の提携している終糸システム®適用認可機関および認可医師、または当研究所までお問合せください。
認可機関および認可医師については、下記のリンクからご確認いただけます。
https://institutchiaribcn.com/jp/認可機関/マンティア医療センターcentro-medico-mantia/ https://institutchiaribcn.com/jp/ベルギーニューロフィードバック・マイオセラピ/

アーノルド・キアリ症候群の国際デー

ICSEB によって発行 28 9月, 2021 患者の同意を得て

9月28日は、アーノルド・キアリ症候群の国際デーです。様々な健康問題を引き起こすこの病気を、より多くの方に知ってもらえるよう当研究所でも取り組んでおります。

残念ながら、当研究所へ治療を受けに来られる多くの患者さんから、正しい診断を得るために長い時間がかかり、医療従事者や家族といった周りからの理解を得るのに苦労していらっしゃると伺っております。

そのため、この国際デーという機会に今一度、この病気で苦しんでいる患者さん、そしてご家族全ての方に、当研究所からのサポートを示したいと思います。当研究所のロヨ医師と医療チームによる40年以上にわたる研究から得たアーノルド・キアリ症候群に関する情報を、今後も多くの患者さんに提供していきたいと思います。

以下のリンクでは、アーノルドキアリ症候群の種類、そしてアーノルド・キアリI型症候群に関する症状と治療法についてご紹介しております。

https://institutchiaribcn.com/arnold-chiari/

2007年以来、当研究所ではアーノルド・キアリ症候群およびその他の原因不明といわれる病気の診断・治療・経過観察に携わってきました。上記疾患は終糸病といわれる病気から引き起こされるもので、治療によってその進行を止め、症状の改善が期待されます。

間違った情報・診断名は患者さんの健康に深刻な影響を与えることから、本日9月28日の国際デーを通して、正しい診断・治療の重要性について強調したいと思います。

終糸システム適用®での終糸切断手術の術後について

ICSEB によって発行 22 7月, 2021 患者の同意を得て

当研究所所長のロヨ=サルバドール医師は、1993年に低侵襲の最新治療、終糸切断手術の適用を始めました。現在まで、キアリ奇形I型、特発性脊髄空洞症、特発性脊柱側弯症および他の関連する病気と診断された患者1850名が終糸システム適用®で終糸切断手術を受けられました。

当研究所の医療チームから術前に全ての患者さんに対して、手術は病気の原因を取り除き、病気の進行つまり悪化を防ぐための治療であり、病気がもたらした神経系の損傷、またそれによる症状、機能不全などを治癒するわけではないことをお伝えしています。

ほとんどの患者さんは術後直後に何らかの症状の改善や消失が見られ、ある患者さんは数ヶ月または数年経ってから症状の変化が見られる場合があります。術後のリハビリや理学療法についても同じことが言え、多くの患者さんはリハビリ後に機能レベルで段階的な改善が見られ、早い人は最初の数ヶ月からすでに変化を観察できる場合があります。

一方で、術前のように症状が悪化し続けることはなく安定はしているものの、術後直後の段階では症状や病状に変化を感じられない患者さんもいらっしゃるのも事実です。術後直後から症状の改善が見られた他の患者さんと比べてしまい、恐怖を煽ってしまうのではないかという懸念から、当研究所ではここで改めて言及したいことがあります。

まず、他の患者さんが同じような症状を持っていたとしても、患者さんそれぞれの臨床像は異なるため、他の患者さんと比較することはできません。唯一患者さんの術前術後の経過が正しいかどうかを判断できるのは専門家であり、術前術後の症状と画像の比較により評価することができます。

また、症状の原因となる損傷には可逆性と不可逆性と呼ばれる2種類の損傷があります。終糸切断手術によって、異常終糸が引き起こしていた全神経系への牽引を取り除くことができ、中・長期的に見て、可能な限り回復する可能性を導きます。しかし、不可逆的損傷があると神経系は再生することができないため、術後の回復度合いは制限されます。

同様に、ある一部の患者は術後に症状が改善、または消失したものの、その後、外傷、事故、ストレス、薬物療法、女性の月経周期の変化、あるいは肉体労働によって術前の症状が再び現れることが、当研究所の医師によって確認されています。それが起こった場合には、以前の術後の状態に戻るまで一定期間かかりますが、一般的には上記不調が解消されると症状も改善していきます。

最後に、ある症例では、終糸病以外の病気も抱えていて、その病気の症状が終糸病と共通している場合、終糸切断手術後、どの症状が終糸病から発症し、どの症状が終糸病以外から来ているものなのかの判断が難しいため、症状が悪化する場合には、終糸病以外に抱えている病気の治療を受ける必要性が出てきます。その場合には、その病気の専門家に診てもらい、患者さんそれぞれに合った治療法を検討する必要があります。

結論として、当研究所医療チームの専門化された経験から、術後の回復がゆっくりな場合や、終糸病の影響をより受けている患者さんに対しても、異常終糸によって引き起こされた過度の牽引力を排除することは、患者さんの健康状態を改善するために最も効果的な治療法だということが言えます。

終糸システム適用®での終糸切断手術は、一般的に患者さんの生活の質を向上し、症状の改善、ほとんどの症例で非常に満足のいく機能回復を確認しています。さらに、外科治療自体は病気の損傷を治すための治療法ではありませんが、終糸病の影響を強く受けた患者さんの場合でも、長期的に見て良好な術後経過が期待できます。

     

終糸病と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にはどんな関係がありますか。

ICSEB によって発行 17 3月, 2020 患者の同意を得て

この質問に答えるには、以下の項目を考慮する必要があります。


  1. 新型コロナウイルス感染症は、最近になって野生動物からヒトへ感染したと見られており、発生から3ヶ月ほどしか経っていないため、分からないことがまだ多くあります。
  2. 現在までに(おそらく何万人もいると想定できますが)、新型コロナウイルス感染症を伴った終糸病患者は確認されていません。
  3. 新型コロナウイルス感染症の症状は、主に発熱、頭痛、咳で、重症化すると肺機能の悪化で呼吸不全をきたします。
  4. 新型コロナウイルス感染症はインフルエンザに似ており、多くの場合(80%)、軽症か無症状です。
 

上記項目を考慮すると、以下のことが推測されます。


  1. 新型コロナウイルスの感染過程および咳(バルサルバ手技)によって頭蓋内圧が上昇し、小脳扁桃下垂(アーノルド・キアリI型症候群/キアリ奇形)の症状である頭痛が悪化することがあります。
  2. 新型コロナウイルスの咳は、インフルエンザの咳と同様、つまり一般的にはわずかではあるものの、脊髄空洞症の症状を悪化させることがあります。
  3. まれに、新型コロナウイルスによる肺機能への影響が、終糸病における脳幹の呼吸中枢への影響を増加させることがあります。また、重度の特発性脊柱側弯症による拘束性肺疾患を悪化させる可能性があります。
  4. 今後、終糸病と新型コロナウイルスの関連性に注視しながら、新型コロナウイルスが神経系や心臓などの他の器官に影響を与えるかを見ていく必要があります。
  5. >一般的に、終糸病が新型コロナウイルスのリスクを増加させることはありません。